「その時、子供たちはかすみちゃんのことをただのしわだらけのおふくろとしか見ない。昔分田上で働いていた頃の、ハタチすぎたばかりのかすみちゃんを知らない。そんな母親を知ろうともしない。昔母親が若かったこと。母親にも青春があったということ__」中略
かすみの声「この手紙を私はどっかに、大切にしまっておこうと思います」
「そして将来私の子供にそオッと見せて自慢してやる」
「見なさい。母さんにもこういうふうに輝くばかりの青春があったのよ」
上は私の大好きな脚本家、倉本聰さんの「前略おふくろ様」の中の一節です。
私自身もこの台詞のように自分の父親や母親の青春時代の事なんて知らないし、知ろうともしませんでした。でも、訊いてみるとやっぱりあるんですよね。こちらが、なんか恥ずかしくなるような淡い青春の想い出が・・・。
一昨年天に召された母がある時「これ、私の宝物。死んだら棺桶に入れて」と大事そうに自分の胸に抱えた手紙がありました。
「何なの?」と聞いたら、それは父からのラブレターでした。
「エーッ!見せて!」っと言って、読んでみたら、もうそれはそれは、感動して涙が出るほどロマンチックなラブレターではありませんか!
そこには年取った父と母ではなく、お下げ髪の乙女と真っ白な歯の好青年の父と母がいるのです。
「棺桶に入れて焼かないわよ。私に頂戴」と母に断って、今でも大切にしています。
父のラブレターは、わが家の家宝になりました。
マダム
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