先日、「ツナグ」と言う邦画のDVDを鑑賞しました。劇中で樹木希林さん演じていた渋谷アイ子が、いつも口癖にしている詩が最後のタイトルの箇所で朗読されていました。
とっても心に響く詩だったので調べてみたところ、上智大学学長も務めたこともあるヘルマン・ホイヴェルス神父(Hermann Heuvers)の随想選書「人生の秋に」に書かれている詩である事を知りました。
祖国日本の大女優、樹木希林さんのこの詩の朗読は、樹木さんならではの素晴らしいもので、何度も何度も拝聴し、反芻してしまいました。
この作品はキリスト教の映画でもなく、この詩も途中までしか読み上げられませんでしたが、これはまさに年老いたクリスチャンの「最上のわざ」を表現した詩に違いありません。
神に仕える為に献身した神父様が、この世で戦う普通の信徒の「もがき」をよくご存知だと敬服いたしました。すでに映画の反響でかなりの方がこの詩の事をご存知のようですが、とっても素敵な詩なので、ご紹介させて頂きます。
マダム
「最上のわざ」
この世の最上のわざは何?
楽しい心で年をとり、
働きたいけれども休み、
しゃべりたいけれども黙り、
失望しそうなときに希望し、
従順に、平静に、
おのれの十字架をになう。
若者が元気いっぱいで
神の道を歩むのを見ても、ねたまず、
人のために働くよりも、
謙虚に人の世話になり、
弱って、もはや人のために役だたずとも、
親切で柔和であること。
老いの重荷は神の賜物、古びた心に、
これで最後のみがきをかける。
まことのふるさとへ行くために。
おのれをこの世につなぐ鎖を
少しずつ外ずしていくのは、真にえらい仕事。
こうして何もできなくなれば、
それを謙虚に承諾するのだ。
神は最後にいちばんよい仕事を残してくださる。
それは祈りだ。手は何もできない。
けれども最後まで合掌できる。
愛するすべての人のうえに、神の恵みを求めるために。
すべてをなし終えたら、臨終の床に神の声をきくだろう。
「来よ、わが友よ、われなんじを見捨てじ」と。